研究概要 |
近年,宇宙構造物や原子力プラントなど,制御対象がより大規模かつ複雑になり,制御対象全体をカバーする制御系を一度に構築することがむずかしい場合が多くなってきた.そのような場合,制御対象をいくつかのサブシステムに分割した上で,コントローラを逐次増設し,その効果を見ながら,順を追って制御するサブシステムの数を増やしていくという,制御系の段階的構築は実用的である.本研究では,各段階で新たに増設されるコントローラとすでに稼働しているコントローラとの間の協調関係をポイントに,高信頼性・高性能を維持した上での制御系の段階的構築を体系的に論じた. 具体的には,すべての段階における (a)耐故障性 (b)制御性能 (c)次段階以降でのコントローラ増設のやりやすさ がコントローラ間の相互作用の特性を表すある行列に注目することによって定量的に扱うことができることを示した,特に本研究で問題となる(c)では,現段階で増設するコントローラが次段階以降の増設の妨げにならないためにその行列が満たすべき条件を導いた.さらにそれに基づき,すべての段階で上記の(a),(b),(c)を同時に考慮したコントローラの増設手法を与えることができた. 本科学研究費補助金により購入したワークステーションを用いることですべての段階における制御性能などの膨大なデータを扱った数値実験が可能となり,本研究成果の有効性を確認することができた.今後はコントローラ間のネットワークを介した情報交換の要素を取り入れたより現実的な実験をすすめる予定である. なお本研究成果は各段階における協調制御としての観点に的を絞った形で"Reliable Load-Sharing Control using a Multi-Different-Compensator Configuration"と題して国際会議The 34th IEEE Conference on Decision and Controlにも投稿中であることを付記しておく.
|