研究概要 |
手術中に低血圧を維持するための血圧制御システムの安全性および安定性を増すために, (a)血圧低下を防止する生体の血圧調節機構の解析, (b)降圧剤の血圧に及ぼす影響の薬理学的な立場からの考察, を行った.具体的には,降圧剤としてカンシル酸トリメタファンとニカルジピンを使用し,(a)に関して,血圧低下に対する内分泌系の防御機構である交感神経-副腎系の分泌物質,アドレナリン,ノルアドレナリン,およびレニン-アンジオテンシン系の分泌物質,レニン,アンジオテンシンの通常血圧時,血圧降下時および低血圧時の血中濃度の変化を測定し,それぞれの系のモデル化を行った.また,(b)に関して,薬理学に基づいて降圧剤に対する血圧の応答をモデル化し,実際の応答の同定結果と比較してみた. その結果,まず(a)について, ・血圧低下を防止する機構は,同定結果から求めた従来のモデルの非線形部分のように血圧値のみから決定されるものではなく,血圧の変化率の影響も大きく受ける, ・降圧剤によって,血中物質の変化に相違があるため,当初考えていたような単純に血圧のみを変数とした血圧調節系のモデルは妥当であるとはいえず,降圧剤の作用機序を考慮に入れてモデル化を行う必要がある, ことがわかった.また(b)について, ・薬理学に基づく降圧剤に対する血圧の応答は一次遅れで表せ,降圧剤が十分循環されるために必要な時間となると考えられる, ・降圧剤の種類,個体差の影響は一次遅れのゲイン,時定数といったパラメータの変更で対応できる, ことがわかった.
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