研究概要 |
本研究では,ロバスト制御性能問題の効率的な解析/設計のために,“構造化特異値"を精度良く短時間で求めることのできる並列計算アルゴリズムの開発を目的として,以下の研究成果を得た. 1.構造化特異値の並列計算法へのアプローチについての検討 構造化特異値の計算を並列化するための一つの方法として,対象システムを分割して各サブシステムごとに構造化特異値を計算するアプローチについて考察した.特に,大規模システム理論におけるシステムの取り扱い方を調査したところ,各サブシステムが結合入力/出力により相互に結合しているシステムを対象にすれば,“結合安定性"に関する議論を構造化特異値の計算に利用できることがわかった. 2.システムの分割による構造化特異値の並列計算法の理論的な検討 前述の“結合安定性"の議論を参考に対象システムの構造化特異値とその構成要素として考えられる各サブシステムの構造化特異値との関係に焦点を絞り,理論的な検討を行った.その結果,(結合に対応したある不確かさを付け加えて)各サブシステム毎に独立に計算した構造化特異値がすべて1未満で,サブシステム間の結合の強さに関するある条件が成り立てば,対象システムの構造化特異値が1未満になることを明らかにした.特に,サブシステムの数が2であるときは,上記条件が必要十分条件となることも示した. 3.シミュレーションによる並列計算アルゴリズムの有効性の検証 以上の検討に基づき,各サブシステムごとに並列に構造化特異値を求めるような,構造化特異値の並列計算アルゴリズムとそのプログラムを,行列数値計算ツールMatlab上で開発した.実際に,種々の例題に対して,本研究で提案した並列計算アルゴリズムを適用し,その有効性を確認した.
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