異なる要素が多重構造をなす任意形状物体の連続断面画像から、輪郭線を自動的に抽出する手法の開発を行った。この手法は要素境界付近に初期設定された閉曲線、その内部エネルギーと画像から受ける外部エネルギーが平衡状態となるように変形・移動することにより、要素の輪郭線を求める。本研究において開発を行った手法は次の特徴を持つ。 1.画像中のテクスチャパターンの相違を数量化し、これをエネルギー関数に組み込むことにより、要素領域の濃淡とテクスチャパターンの両者を同時に考慮した輪郭抽出が行える。そのため、異なる要素の輪郭線を精度良く抽出することができる。 2.輪郭線で囲まれる面積に比例したエネルギー関数を導入することにより、凹状の輪郭部分も正確に抽出を行うことができる。さらに、二つの要素領域に一つの初期輪郭線が与えられた場合でも、収束途中の輪郭線のくびれ部分を検出し輪郭線を二つに分裂させ、それぞれの要素の輪郭線を求めることができる。 3.前断面で求まった輪郭線を、次の断面の初期輪郭線として用いることにより、少ない収束回数で輪郭線が自動的に求まる。 マウス胚子の連続切片の顕微鏡写真画像から輪郭線抽出を行い、開発した輪郭線抽出法の有用性ならびに実用性を検証した。これにより、多数の連続断面画像からの輪郭線抽出にかかる労力を大幅に削減することができることがわかった。
|