研究概要 |
本研究では,人間の手先インピーダンス設定法を実験的に解析し,その特徴を明らかにすることを試みた.主要な結果は以下の通りである。 1.1軸インピーダンス推定装置の開発 人間の手先インピーダンスを実験的に推定するためには,作業中の人間の手先に外部から強制的な変位を与え,それに対応して発生する力を測定せねばならない.そこで,本研究では推力制御が可能なリニアモータ(日本トムソン(株)製)を利用して1軸インピーダンス推定装置を新しく開発した.この実験装置のハンドルに剛性制御を施し,作業中の被験者の手先を強制的に変位させる.そしてその結果生じる反力を測定し,人間の手先インピーダンスを同定する.この装置により1方向の手先インピーダンスを高い精度で推定することが可能となった. 2.人間の手先インピーダンス調節機構の解析 被験者に,1)筋収縮レベル維持,2)手先力維持という2種類の作業課題を与え,作業中の被験者の手先インピーダンスを測定することにより,筋収縮と腕のインピーダンスの関係を実験的に解析した.その結果,(1)上肢の屈・伸筋群の同時活動が,手先スティフネスと粘性を増加させること,(2)手先力維持中のスティフネス,粘性が,手先力の振幅と方向に依存して変化し,手先力の方向がスティフネス楕円の長軸方向にほぼ一致する場合にはパラメータの変化は小さく,逆に短軸方向に一致する場合には各パラメーターが大きく変化すること,(3)被験者が手先力を発生する際には,手先力方向のスティフネスと仮想平衡点が同時に変化していること,そしてその変化が手先力の大きさにほぼ比例すること,(4)筋骨格モデルを用いることにより,筋収縮レベルと関節スティフネス・粘性の関係をほぼ説明でき,筋電位からインピーダンスを予測できる可能性があること,など明らかになった. 今後は,開発したインピーダンス推定装置を2自由度型に拡張するとともに,より現実的な作業時の人間の手先インピーダンスのプラニング方策を明らかにしていきたいと考えている。
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