研究概要 |
本研究では、8チャンネルInGaAs-PINフォトダイオードアレイ(チップ素子供給 富士通、ボンディングおよびパッケージ封入 浜松ホトニクス)の製作を行い、量子効率及び暗電流の温度依存性について測定した。その結果室温300kに於いて量子効率82%、暗電流0.7nA、液体窒素温度77kにて量子効率70%、暗電流20fAの値が得られた。これらの特性を元に、電荷蓄積型検出器(CIA:Charge Integrating Amplifier)を作成した。蓄積時間20秒間で10^<-14>Wの検出感度が得られた。これは、可視域での微弱光検出で用いられる光電子増倍管で得られる検出感度とほぼ同程度である。このように非常に高感度な低ノイズ光検出器アレイを、8チャンネル構成されている。 この光検出器を用いて近赤外域におけるマルチチャンネルアナライザを設計・製作した。回折格子の角度分散を、次式β=sin^<-1>(sinα+mλ/d),(m=0,±1,±2,,,,)(βは回折角、αは入射角、mは次数、dは回折格子の格子定数)を用いて計算した。光線追跡を行い収差を補正したレンズ系を組み合わせ分光系を構築した。一方、入射系はバンドル光ファイバ(住田光学製)を用いて、測定が簡易的にできるよう設計した。光ファイバで導かれた近赤外微弱光は、平行ビームにコリメートされ平面回折格子に導かれる。回折格子により波長特有の方向に角度分散された光は、群レンズにより収差を補正され、コンピューター制御されたCIA検出器に導かれる。光信号をADコンバータを通してパソコンに取り入れられ、波形処理が施される。計測開始、終了はPIOボードを通してコンピュータ制御されている。操作性は極めて簡単で高感度が得られる。本研究により、近赤外域において極微弱光を測定対象とした同時多波長分光計測が可能になり、幅広い分野での応用が期待される。
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