研究概要 |
レーザー長光路吸収法は,大気中にレーザー光を伝搬させ,大気の吸収スペクトルを測定することにより,光路上の大気微量分子の濃度を測定する高感度の大気微量分子遠隔計測手法である。現在は,人口衛星を利用した地上衛星間レーザー長光路吸収測定も実用化に向けた研究が進められている。特に地上衛星間の様に光路長が長くなる場合には,レーザー光の減衰が激しく,高精度の測定を行うためには,パルスレーザーの使用が不可欠である。本研究では,レーザー長光路吸収法におけるパルス光検出の高感度化,高精度化とその応用に関する研究をシミュレーションを中心に行った。 まず,赤外のパルス光検出回路を計算機上でシミュレーションするプログラムを作成し,赤外パルス光の検出精度の向上に関する評価を行った。 次に,地上衛星間レーザー長光路吸収法の検討を行った。この結果,地上からレーザー光を発射し静止衛星上の受信システムで受信した場合に,送信レーザーの出力が数mJ,口径15cm程度の受信望遠鏡のシステムで,1パルス当たりの信号対雑音比100以上が得られ,NO,HNO_3,HF,HCl等の分子が,レーザー繰り返し10Hz,1分間の測定で10%以下の精度でカラム濃度の測定が可能であることが明らかになった。 さらに,相関分光法による地上光路のメタン長光路吸収測定システムの検討を行った。この方法では,メタンの吸収線に波長を合わせた多モードレーザーを光源とし,メタンのガスセルと大気中メタンの吸収の相関からメタン濃度を求める。検討の結果,光路長1km,ガスセルの圧力 0.5気圧の条件で,1パルス当たりの測定精度15%が得られることが明らかになった。
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