本研究では、水分の供給を受けるコンクリートの中性化進行予測手法を開発するために、モルタル供試体を用いて以下の実験を行った。 1.促進中性化試験および促進試験中に定期的に供試体に水分を供給する散水促進中性化試験を行った供試体の中性化深さの経時変化の測定 2.任意の含水率に調整した供試体を用いた水分浸透実験による、浸透水分量および供試体内の含水率分布の経時変化の測定 3.任意の材令において乾燥または水分の供給を受ける場合のセメントの結合水量の経時変化の測定 その結果、以下の成果が得られた。 1.水分浸透実験の結果より、不飽和状態における水分浸透係数を明らかにし、モルタルの微細組織との関係について検討した。この結果から、任意の細孔構造を持つモルタルの水分移動予測手法(水分逸散を含む)を開発した。 2.乾燥および水分の供給を受ける場合のセメントの結合水量予測手法と水分移動予測手法を組み合わせることにより、任意の環境条件下で含水量が変化する場合のセメントの水和の進行とそれに伴うモルタルの性質の経時変化を予測することができた。 3.水分移動予測手法とセメントの水和進行予測手法を中性化進行予測手法と組み合わせることにより、水分の供給を受ける場合の中性化の進行を精度良く予測することができた。 4.3.の中性化進行予測手法により、促進試験中の水和の進行が中性化速度に及ぼす影響を定量的に検討した結果、試験中に水分の供給が有る場合は、セメントの水和が中性化の抑制に大きな役割を果たしていることが明らかとなった。また、水和反応性の低い結合材を使用した場合や初期養生の不十分な供試体を用いて、水和の進行が阻害されるような条件で促進試験を行う場合、中性化速度を過大評価することが明らかとなった。
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