粒状体構造の破壊現象は、粒子自体の破壊より、むしろ個々の粒子の剛体運動に基づく構造骨格の変化によるものであるため、連続体として考えた場合に考慮できないいくつかの特徴がある。本研究は、主に楕円粒子を用いた個別要素法による数値実験を通して、粒状体構造の破壊挙動について様々な側面から検討を加えた。 1.ロックフィルダムや海底の捨石構造など比較的粗い粒子からなる堤体の動的破壊現象においては、これまでの振動実験や個別要素法による数値実験により、堤体斜面が滑り破壊を生じる限界加速度に、粒子サイズ依存性、加振周波数依存性のあることが確認されている。この破壊現象が体積変化を伴うことに着目し、上の粒子が下の粒子を乗り越えるために必要となるポテンシャルエネルギーが限界状態を決めるという概念モデルを構成した。このモデルによると、破壊加速度は、粒状体の安息角、斜面の傾斜角、粒子の代表長さ、加振周波数の4つのパラメータで簡便に表され、粒子サイズ依存性、加振周波数依存性を、ある程度定量的に評価する事ができる。 2.粒状体のせん断破壊時の挙動を個々の粒子の運動から考察することを目的として、粗い粒子からなる地盤モデルの支持力試験のシミュレーションを行い、粒子10〜20個の幅を持つ通常のせん断層の発達による破壊様式と異なり、明確なせん断層の形成されない破壊様式が存在することを明らかにした。 3.ロックフィルダムなどの粒状体構造中の波動伝播性状を把握することを目的として、個別要素法によるシミュレーション結果と連続体の波動伝播解析の比較を行い、個々の粒子には圧縮波、せん断波の微視的挙動としての並進運動の他に、エネルギー的にそれと比較し得る程度の回転運動が生じており、この回転エネルギーの寄与分だけ、圧縮波、せん断波の振幅が減少する可能性のあることを明らかにした。
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