設計上必要となる比較的硬質な地盤材料であるセメント改良地盤内に生じる10^<-3>(0.1%)程度以下のひずみレベル領域における変形係数を、室内試験により実験的に精度良く求める研究を行った。すなわち、従来、セメント改良土に対してほとんどデータのない微小ひずみ領域におけるせん断挙動に及ぼす1)ベッディングエラーの影響、2)拘束圧の影響、3)養生日数と改良効果の影響、4)サンプリングの乱れの影響について検討した。さらに、三軸圧縮試験から求めた5)圧縮強度q_<max>と初期弾性ヤング係数E_<max>の関係、6)損傷関数・塑性関数・非線形化関数とその関連性を検討した。その結果、1)載荷ピストンあるいはキャップの動きから軸ひずみを測定するとベッディングエラーの影響によりセメント改良土の剛性を著しく過小評価するので、単調載荷および繰返し載荷三軸圧縮試験では供試体側面で正確な軸ひずみを測定する必要がある。2)不攪乱試料に対する一軸圧縮試験から得られるE_<50>とq_uは、三軸圧縮試験から得られるE_<max>とq_<max>に比べて過小評価され、また、ばらつきの程度も大きい。特に、砂質土系のセメント改良土ではその傾向が大きい。3)セメント改良火山砂礫に対し実施した繰返し載荷三軸試験から得られる等価ヤング係数E_<eq>は、乾燥密度・セメント混合率が大きくなった。また、養生日数の増加に伴い、E_<eq>は増加傾向にあるが100日以降はやや低下した。4)従来のロータリーコアチューブサンプリングにより得られた試料は相当乱れている場合があり、乱れの影響は、q_<max>の10%程度の偏差応力での接線変形係数E_<tan>、初期ヤング係数E_<max>、圧縮強度q_<max>の順に大きい。したがって、高品質の試料を得るためには、従来のサンプリング法を改善する必要がある。5)従来、E_<max>/q_<max>=100の関係が知られているが、ベッディングエラーの影響を含まない三軸圧縮試験によれば、E_<max>/q_<max>=1000〜2000程度であった。すなわち、従来考えられていたよりもセメント改良土は硬く、自然の堆積軟岩(泥岩)の特性に似ている。6)地盤材料のセメント改良土の変形係数について、弾性ヤング係数(非損傷)の軸応力依存性とせん断載荷による損傷に伴う低下、せん断載荷に伴う塑性化をモデル化することにより統一的に解釈できる見通しを得た。
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