研究概要 |
本研究は,すべり線の発生のみならず,端面拘束などにより供試体が経験する非一様変形を一種の分岐現象として捉え,材料の構成関係を同定しながら,供試体が発現する強度を説明しようとするものである.得られた成果を要約すると以下のようになる. 1.有限要素法による解析を行う場合,極限状態近傍でのアワグラスモードやゼロエナジ-モードの発生は,本来の解を覆い隠してしまうため深刻な問題である.4つの4節点四角形要素を選び,それぞれの要素の固有ベクトルと固有値を調べることにより,極限状態近傍での特性を把握した. 2.供試体試験自身も境界問題であれば,材料の構成関係を陽な形で求めることはできない.そこでまず,従来の理論的フレームワークで,どこまで供試体の不均質場を追跡できるかを検討した.すなわち仮想粘性法を組み込んだ土・水連成FEプログラムを開発し,平面ひずみ状態での圧縮せん断を解析した.供試体中に発生する間隙水のマイグレーションが不均質場の形成に支配的な影響を及ぼすことがわかった.しかし,マイグレーションの影響が大きすぎて,材料の硬化則を同定するまでには至らなかった. 3.供試体が経験する分岐を順次追跡するためには有限変形理論が必要であるが,2より,さらに土・水の連成であることも不可欠である.そこで,Cam-clayモデルの硬化則を仮定した土・水連成FEプログラムを開発した. 4.1軸試験のようにハダカのままで圧縮せん断でき,かつそのときの有効応力を計測できる試験装置を用いて,Ko圧密された粘土に発生するスベリ線網を計測した.スベリ線網の間隔は離散的であり,供試体の壊れ方によって異なることがわかった.すなわち供試体の強度は,壊れ方に依存した離散的な量であることが予想される.
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