本研究は、河川改修された構造物、あるいはそれによって作り出される流れの構造の詳細と、それに対応する生息魚類の分布状況を整理・分析し、魚類生息にとって必要な機能を抽出しようとしたものである。 主要な結論を整理すれば、以下のようである。 1.魚類の生息状況と環境改善策:年間を通じて最も卓越した魚類としてウグイを選び、その匹数と河川改修工区の関係の考察から、匹数の最大値と平均値が大きい場所は、木工沈床(1985年)および下流部のブロック護岸区であることがわかった。木工沈床工区には、木柵工や木工沈床によって側岸に凹凸を付ける(場所によっては千鳥配置)とともに、その凹部に置き石や中央部に楕円形の人工淵を配置したりして、縦横断面を複雑にすることによって流速分布に多様性をもたせる工夫がなされている。 2.河川形態に関する指標化と魚類の生息量:河川空間の多様性の指標を最大水深と平均水深の比で考え、採補された全魚類の匹数の関係を、異なる季節について考察した結果、観測期間内で最小流量の時期(10月:0.5m^3/s)と最大流量の時期(1月:1.8m^3/s)で傾向が全く異なることが分かった。すなわち、前者は上述の指標と魚類生息量の相関関係は良好で、渇水時には水深変化の多様性が重要であることが示唆された。 以上、木工沈床のような工夫を凝らした直線区間の方が他の区間よりも魚類が多く、とりわけウグイについては旧河道や蛇行部よりも高い生息密度が観察されていることが分かった。ただし、旧河道を未改修のままに残した区間における多様性には、今なお追いつけずにいることを明記しておく。
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