本研究は、台風やハリケーン等による高潮と暴浪が同時に砂丘と海浜に来襲する場合の、侵食量や被害を定量的に評価・予測する事を目的としている。そのため、まず侵食海浜の測量や観測を通して集めたデータに基づき、地形データベースの作成と物理現象の解明に努めた。次いで、砂丘と海浜の複合断面の経時的な侵食状況を予測するための、不規則波を対象とした2次元不数値海浜変形モデルの開発を行った。その内容については、波に関する数値・物理モデルの国際シンポジウムにおいて発表した。また、砂丘と海浜侵食に生じる浜崖の現地観測と、数値モデルを用いた砂崖形成に関する考察について、第41回海岸工学会議で発表した。加えて、砂丘と海浜の侵食時には、砕波によるエネルギー散逸が低質移動の最も主要な駆動力になっているものと考え、エネルギー散逸を求めるのに必要な不規則波の砕波率を定量的に評価する試みを行い、その結果についても波に関する国際シポジウムにおいて発表した。 砂丘-海浜侵食に関する地形データベースの作成では、ここで行った現地測量以外の既存のデータ収集も行った。さらに、鹿児島県東串良町柏原海岸における1947年から1992年までの11枚の航空写真を用いて、砂丘林の終点、始点、植生ライン、汀線位置のデータを読み取り、データベースに加えた。そして、砂丘林の面積、海浜面積等の経時的な変化について考察を加えた。 また、ここで開発した2次元数値海浜変形モデルは、取り扱う現象が観測にとって条件の厳しい異常海象時に起きるため、キャリブレーションを行うのに必用な波浪、侵食地形のデータが十分得られなかった。そのため、モデルの汎用化については、今後更に検討を加える必用が残された。
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