本研究では、都市空間における商業活動の空間分布が市場メカニズムによっていかに決定されるかを明らかにするとともに、そのような空間分布が資源配分上望ましいものであるかを評価するために行われた。本年度の研究成果の概要は以下の通りである。 (1)商業施設の立地均衡のモデル化 ミクロ経済学の理論に基づいて、消費者、小売業、デベロッパー、及び地主の行動と、小売市場、床市場、土地市場の均衡をモデル化した。ここでは、企業組織の違いが立地分布や資源配分に及ぼす効果を分析するため、二通りのモデルを作成した。一つは、すべての小売業が小規模で完全競争的に行動する場合、もう一つは、大規模小売り店間の寡占競争の場合である。 (2)商業施設の最適配置と立地均衡との比較 商業施設の最適配置は、社会的余剰を目的関数とする数理計画問題を解くことによって求められる。そしてこのような問題の最適条件に関する式を、上で求めた二通りのモデルの立地均衡条件式と比較することにより、社会的最適を分権的に達成するための条件と政策手段を明らかにした。その結果は、小売業の立地行動は、消費者や他の小売業に外部効果を与えるとともに、寡占の場合には不完全競争による厚生損失があるため、効率的な資源配分を達成できないことがわかった。 (3)コンピュータ・シミュレーションによる商業施設の立地構造の分析 上述の理論分析につづいて、さらに具体的な分析を行うために、コンピュタ-・シミュレーションを行った。ここでは、モデルに含まれる種々のパラメータの変化が、立地均衡および最適配置のもとでの商業施設の分布、さらには経済厚生の分配にいかなる影響を与えるのかを分析した。
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