1.首都高速道路に近接する高層ビルから交通流を約90分間にわたってビデオ撮影し、各車両の位置を0.2秒おきに画像処理手法で採取した。この観測データをもとに各車両の走行挙動を分析した結果、自動車運転者の加減速行動は基本的に前車両との相対速度に依存しているものの、行動の時間遅れが前車の加減速行動にも影響されていることが明らかにされた。これは、運転者が相対速度の変化率と前車の制動灯の情報をも認知しながら運転操作を行っていることと考察される。 2.渋滞流を走行する車両の走行挙動データの解析から、運転者の操作行動モデルを同定した。本モデルは既存のモデルに比較して、相対速度に対する時間遅れに上記から得られた特性を盛り込んだ点に特徴がある。 3.高速道路の渋滞のひとつの特徴である、縦断勾配がサグ形状となっている地点が溢路となる現象について観測データから分析を行った。その結果、運転者が視角から縦断勾配の変化を認識できないサグにおいては、変化を補償する加速ペダルの踏み込み行動が常に後手後手に回ることが溢路となる原因である、との仮説に至った。さらにこの仮説を2.で得た運転者の操作行動モデルをもとにしたシミュレーションで検証した。したがって人間が操作する自動車交通では、既設の特定のサグを溢路とする渋滞の発生は避けがたいものと考えられる。 4.サグを溢路とする渋滞を軽減するため、今後は、1)運転者が認知しやすい縦断勾配の変化構造に関する研究、2)運転者による縦断勾配変化の認知遅れを補償する支援装置の研究の2つの方向が考えられる。 5.以上の知見から平成7年度には、1)運転者による縦断勾配の変化の認知メカニズム、2)運転者による認知と操作行動との関連の両面を追求するため、科学研究費補助金の申請を行った。
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