幅32cm、奥行き6cm、高さ85cmの直方体で、下部を7つのコンパートメントに分割したカラムを試作し、その中に、任意の高さに焼却灰を充填した。そして、その上部中央へ線上の降水を行い、下端の各流出口からの流出水量を時間経過と共に測定した。供給した水分は、焼却灰層内を鉛直下方に移動しながら横方向へも拡散しつつ浸透し、最終的に下端より流出して、2次元的な流出分布を形成する。このようにして、焼却灰層に於ける2次元の不飽和水分移動実験を実現した。実験は、充填層厚さ、降水量、充填密度等を様々に変化させて、同様の測定を繰り返した。そして、得られたこの2次元流出分布に対し、土壌の不飽和浸透理論の適用性の検討を試みた。まず、水分特性曲線、飽和透水係数を実測し、Van Genuchtenの方法で不飽和透水係数を推定した。そして、2次元に拡張したRichardsの不飽和浸透式をコンパートメントモデルを用いて解くことで、理論上の2次元流出分布を得た。その結果と実験値を比較すると、対照実験として用いた砂の場合は、比較的良好な一致を見たが、焼却灰の場合、全く一致しなかった。焼却灰の場合、計算値は実験値に対し、横方向拡散がほとんど進行せず、また、定常に至るまでの時間が10倍以上も長くなった。このような焼却灰層の場合に理論値が実験値と一致しなくなった理由として考えられたのが、不飽和透水係数の極端な小ささである。焼却灰の不飽和透水係数をVan Genuchtenの方法によって推定しようとする場合、非常に広範な間隙分布を持ち、且つ多孔質で溶解成分も多量に含有するというその特異な性質から、水分特性曲線に於ける飽和含水率と、飽和透水係数に関しては、その測定上にかなり問題が存在することが推察された。そのため、一次元カラムを用いて焼却灰の不飽和透水係数を実際に測定することが重要であると思われる。
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