水環境中の安全性の指標のひとつとしてウイルスの問題が存在する。とくに、腸管系ウイルスの存在が懸念されるが、本研究では、その高率的な検索法としてのPCR(Polymerase Chain Reaction)を水環境中の腸管系ウイルス、とくに肝炎ウイルス(A型)に適用した。 ここで検討したのは以下の諸点である。 1)試料の濃縮・精製:水中試料のウイルスは希はくであるためメングラン法による濃縮を試みた。 2)PCRの適用:A型肝炎ウイルスのstandardを譲りうけ、そのシーケンスをもとに同定を試みた。 3)実環境での調査:腸管系ウイルスは下水中に存在することが推定されるので、数ヶ所の下水処理場におもむき、生下水、及び生物処理水、消毒後の放流水を試料として、ウイルスの存在を確認した。 生下水中には、深水日、時間により、標的ウイルスが検出されることもあり、肝炎ウイルスの存在が示唆された。ただし、生物処理後及び消毒後には全く検出されず、少なくとも下水処理施設である都市では、水環境中に肝炎ウイルスの漏えいは、ほぼないと評価されると考える。しかしながら、展望として、プラーク法との併用による定量化、他ウイルスの同定・定量、統括的ウイルス指標の検討など課題にあげられる。
|