合成洗剤の主成分である界面活性剤は、微量ながら着実に底質や生物相に蓄積して長年に渡り重大な水質汚染を引き起こす可能性を持つため、本研究では下水道の整備が遅れている新興住宅地を流域に持つ河川および湖沼における界面活性剤濃度(MBAS)に関する詳細なデータ収集を行い、これらの物質の水環境中の運命予測手法を開発することを目的として、対象物質の季節変動とその要因、対象物質の流下方向の変化とその要因、対象物質の水相と底質相への分配、対象物質の現場における生分解特性などについていくつかの検討を行った。主たる対象流域として琵琶湖・淀川水系を取り上げ、流域の大部分が住宅地域で生活雑排水負荷の大きい中小河川における76地点のMBAS濃度データを環境庁水質保全局監修の水質年鑑昭和53年度版〜平成4年度版から抽出した。このような15年度にわたる河川・湖沼水中MBAS濃度の長期的なデータ解析結果を用いて環境水中における界面活性剤の基本的な挙動特性が整理できた。さらには、水中の界面活性剤濃度の季節変動と流下方向の変動特性を統計的に解析した結果、それらの変動に影響する要因(流入負荷量の変動、吸着、生分解、水から底質への移行、その他)に関わる主要な要因を予測することができた。各態間の物質の移動・分配と各態における物質の生分解を定式化し、対象流域における界面活性剤の物質収支式を立てることにより、現場における一般的な化学物質の各態濃度の変動を再現できるようなモデルの実用性が提示できた。
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