研究概要 |
1993年釧路沖地震は,釧路で震度6を記録し,強震記録によると,釧路地方気象台の地動水平加速度の最大値は気象庁強震計で922cm/s^2,建設省建築研究所の強震計で711cm/^2と非常に大きな値を記録した.以上の情報から,釧路では当初かなりの被害が生じたと予想されたが,実際には大きな被害を受けた建物はわずかであり,過去の大きな被害地震に比べて建物の被害は少なかった.そこで,1993年釧路沖地震について,記録された非常に大きな最大加速度の割りに,建物の被害が小さかった原因を究明することを目的とし,地震動の性質と建物の被害の関係を把握するための解析的研究を行なった. まず,実際に存在する建物にかんするデータとして,静岡県で昭和48年以降に建設された鉄筋コンクリート造建物のデータから耐力分布を求め,これに基づいて,一自由度系弾塑性地震応答解析を行ない,建物の被害度を計算した.入力地震動は,本研究の対象とする釧路(1993年釧路沖地震)の他に,大きな加速度を記録したTarzana(1994年Northridge地震),広尾(1962年広尾沖地震),乙部町(1993年北海道南西沖地震(余震))(以下大加速度地震動と呼ぶ),更にこれを比較するために,地震応答解析によく用いられる1940年El-Centro,八戸(1968年十勝沖地震),東北大学(1978年宮城県沖地震)(以下一般地震動と呼ぶ)とした.その結果,(1)建物の弾塑性性状を考慮すれば,建物は塑性化することによって周期が伸びること,(2)大加速度地震動は短周期成分には非常に大きなパワーがあるが,周期が長くなるに従いそのパワーは急激に低下すること,(3)建物の耐力は低層のものほど大きいこと,の3つの理由により,大加速度地震動による建物の被害度は,建物に被害が生じるような建物の耐力が平均値より小さいレベルでは,一般地震動よりむしろ小さくなることがわかった.
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