軸圧縮力を受ける円形鋼管の塑性局部座屈を対象とし、早期の塑性局部座屈を防ぐため、剛体あるいは厚肉な円形鋼管により、外側から拘束した場合の有効性についてはこれまでに明らかにされている。本研究では外側から拘束する円形鋼管を剛体に近い厚肉なものとすることなく、比較的薄肉な円形鋼管とした場合の塑性局部座屈性状を把握、考察するため、短柱圧縮実験及び有限要素解析を行った。短柱圧縮実験では、径厚比25.0の円形鋼管(試験体)に対して、外側から拘束する円形鋼管の管厚を3種(試験体の管厚の0.29倍、0.52倍、1.04倍)とし、また比較のための無拘束も含めた計4ケースを1シリーズとして組んで行った。また、上述と同様に径厚比41.0のシリーズに対しても実験を行った。実験結果からは、径厚比25.0のシリーズについては、試験体はすべて軸対称波形を伴う塑性局部座屈を起こし、外側円形鋼管の管厚が厚肉である程、耐力、変形能力とも上昇しており、外側円形鋼管が薄肉であっても、無拘束の場合と比較すると、ある程度の耐力、変形能力が確保できることが明きらかとなった。これに対して、径厚比41.0のシリーズについては、試験体はすべて内側への変形が卓越する非軸対称波形を伴う弾性座屈に近い形で崩壊し、外側鋼管の管厚が最も厚いケースを除き、ほとんど耐力、変形能力に対して有効とはならないことが明らかになった。上述の実験で対象とした径厚比25.0のシリーズに加え、径厚比17.5及び径厚比33.0のシリーズを対象とし、有限要素法により軸対称座屈を仮定した塑性局部座屈挙動を追跡した結果、軸対称波形を伴う塑性局部座屈に対しては、外側円形鋼管の管厚は、試験体である内側円形鋼管の管厚の約0.25倍程度とした薄肉なものであっても、無拘束の場合と比較すれば、ある程度の耐力、変形能力が確保できることが明かとなった。
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