本研究は、合理的な木質構造の設計に欠かせない、材料と接合部強度の相関性を把握することを目的に行った基礎的研究である。本研究で対象とする構造体は、集成材を用いた比較的規模の大きい建築物である。 具体的には、材料を代表するパラメーターとしてヤング係数を考え、それをばらつかせ実大継手の実験を行った。実大継手は、前述したように比較的規模の大きい接合部であるので、接合具が多数本打たれる場合まで言及できるように、1列8本から3列4本までをパラメータとして設計した。接合具は、ボルトとドリフトピンとした。 その結果、以下の知見が得られた。 1.集成材になると、製材時にみられたような明確なヤング係数による接合強度の違いがみられない。 2.全体にバラツキが大きく、部材のヤング係数以外の因子を考慮する必要がある。 1については、集成材ゆえに接合具のある当該部材のヤング係数、あるいはその集成材を構成している部材すべてのヤング係数との相関性について検討したが、有意な結果は得られなかった。2については、フィンガージョイントの位置、節の位置、加工穴の精度が影響しているものと思われる。 これまでの研究をもとに解析的に強度を求めることも試みたが、実験結果のバラツキが大きく有意な結果は得られなかった。そこで、加工精度の影響等を包含できるよう1本を確率変量として扱い、統計的な解析を行ったところ、実験結果を比較的よく追跡できた。 今後は、比較的よい一致を示した解析のバックデータをさらに蓄積し、信頼性を向上させる必要がある。そのためには、個人で収集できるデータ量に限界があるため、関連団体等において、そのようなデータを定常的に収集できる環境の整備が望まれる。また、今回行った解析では、限定条件つき、ある仮定下のものである。それらについても理論的・実験的に解明していく必要がある。
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