研究概要 |
建築構造物に付与すべき信頼度レベルを数理的アプローチが可能な経済的要因から決定する信頼度レベル設定法の開発を試みた。建築物は設計、建設、運営の様々な局面で相互に関連しつつもそれぞれに特徴的なコストをもつ。信頼度レベルを決定する上では建築物が損傷を受けたときに発生するコストの取り扱いとくに重要になる。本研究では、建築物に係るコストを、1)初期建建設コスト,2)損傷修復コスト,3)損害コスト,4)波及コストの4種類に類別し、これらの総和の期待値である全期待コストの最小化から設計信頼度レベルを決定する手法を定式化した。本解析モデルでは、初期建設コストは設計耐力(抵抗力)の期待値に比例し、損傷修復コストは耐力の期待値と損傷率との積に比例するものとした。これに対して、二次的コストとも言うべき損害コストおよび波及コストは設計耐力の期待値とは陽には無関係で損傷率の関数となるモデルを仮定した。入力である荷重モデルは、地震荷重を想定したPoissonインパルス過程荷重モデルを採用し、建物使用期間10年、50年、100年の3期間について、期待コストを最小化する設計信頼度レベルを導くアルゴリズムを確立するとともに、最適な解における各コストの比率なども明らかにして設計における参考資料を提示した。建築物の損傷の取り扱いについては、初通過問題としての解析結果とともに建物使用期間内に2回以上の損傷を受けその度に損傷修復コスト,損害コスト,波及コストを生じるモデルによる解析も行っている。
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