研究概要 |
コンクリート及びモルタル試験体中を伝播する横波超音波の伝播速度と吸収係数により,動的せん断弾性係数と動的せん断粘性係数を算出し物性の評価を行い以下のような成果が得られた. ・同水セメント比のコンクリート試験体とモルタル試験体について行った実験では,動的せん断弾性係数は打設後数時間までは骨材量が多く,単位水量の小さいコンクリートの方が大きな値となり,モルタルとは変化の様相が異なり,打設後5時間前後の水和が始まる頃からのその変化の差が小さくなり,24時間後にはほぼ同じ値となる.一方動的せん断粘性係数は,24時間後も大きな差が残る.これは吸収係数の値がコンクリートとモルタルでは大きく異なることによるもので,吸収係数が明らかに骨材の影響を受けるものである. ・粗骨材最大粒径を変化させたコンクリート試験体について行った実験では,吸収係数が打設後初期において,粗骨材粒径が大きいほど大きい値を示し,動的せん断弾性係数及び動的せん断粘性係数には大きな違いが見られないことから粗骨材最大粒径に違いによる影響は吸収係数に見られる. ・高性能AE減水剤が及ぼす影響について行った実験では,吸収係数及び動的せん断粘性係数をに大きな差が生じ,高性能AE減水剤を用いる高流動コンクリートの物性評価が適用可能である. ・水セメント比が異なるモルタル試験体について行った実験では,吸収係数,動的せん断弾性係数及び動的せん段粘性係数いずれも打設直後は変動が大きく,打設後1時間前後に変曲点があり,水セメント比が小さいほど変曲点を示す時期が遅くなる.併せて行ったフロー試験とも対応する. 以上より,吸収係数,動的せん断弾性係数及び動的せん断粘性係数は粘弾性的挙動を把握するのに適しており,凝結過程におけるコンクリート物性性状を明確に表すことが分かった.
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