研究概要 |
既存の温室付設型半地下試験家屋を用いた室内熱環境の長期実測と数値計算の両面から、その熱的特性を調べ、熱的な設計方法に関する知見を蓄積し、その最適設計のための基礎資料を得、設計ツールとしての数値計算方法を確立することが本研究の目的とするところである。 1.試験家屋に対する暖房実験用装置の設置 年間を通してほぼ一定の室温を達成し、それに必要な年間エネルギー消費量を計測するため、温度センシングによる暖房運転発停止装置、積算記録装置、および暖房装置を設置し、パーソナルコンピュータによる制御インターフェースを開発した。 2.試験家屋を用いた熱環境の実測 当初は、1.で設置した装置を用いた暖房状態での長期実測を行う計画であったが、申請した設備備品の納入の遅延や昨年の記録的猛暑などの理由により、暖冷房を行わない自然室温状態で、(1)夏期における温室の日射遮蔽、(2)窓の開放、冬期における(3)夜間断熱、(4)日中の温室-居室間の換気の効果に関する実験を行った。その結果、(1)夏期における室温は日射のある日中には外気温と透過日射の影響を受け、温室がない室の温度を上回るなど変動が大きいこと,(2)夏期におけるこうした熱環境の悪化を抑えるには、日射遮蔽と通風がこの順に有効であること,(3)冬期の室温は、夜間に温室がない室の温度を下回り、相対的変動が大きいこと,(4)これを防ぐには温室の窓ガラスに施す夜間断熱の手法が最も有効であること.などを定量的に明らかにした。 3.熱環境の予測プログラムの作成 3次元有限/境界要素法に基づく詳細な予測プログラムとそれを簡素化した簡易予測プログラムを作成し、実測値との比較による性能評価を行った。その結果、実測された室温を3℃前後の精度で再現できることなどが明らかとなった。目下、これを基に最適な熱的設計のためのCADツールを作成中である。
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