本研究では、雑誌『都市問題研究』『都市問題』『都市計画』『都市計画論文集』をおもな対象として、1970年代から現在までにおける住民参加型まちづくり論の変遷について分析・考察をおこなった。その結果、つぎのことがあきらかとなった。 1.1970年代におけるまちづくり論の内容 1970年代の住民参加型まちづくりの特徴の第一として、その契機が公害反対運動に代表される「運動」「要求」型であることがあげられる。とくに、初期にはこの傾向が強かったが、後期になるにつれて徐々に行政計画策定への「参加」型が増加するようになる。また、行政計画主体の展開が多く、計画策定者としての行政の役割と計画への住民意見の反映といった図式で論が展開される傾向が見られる。 2.1980年代におけるまちづくり論の内容 1980年代は住民参加型まちづくり論の数そのものが少なくなる。これはいわゆるバブル経済といわれる契機の好調により、地道な住民参加型まちづくりが影をひそめたことに起因している。また、「まちづくり」という言葉も耳障りのいい言葉としてさまざまな意味で用いられ、乱用ぎみの兆候がみられる。しかし、後期にはいると、住環境改善型のまちづくりを主として協働型まちづくりの展開が先進地区によって試みられるようになる。 3.1990年代におけるまちづくり論の内容 1980年代後半の流れを受けて、協働型のまちづくり論がさかんに議論される。また、まちづくり手法論や組織論についても「デザインゲーム」や「NPO」「まちづくり基金」「公益信託」など多様な提案や試行がなされるようになった。「パートナーシップ」や「コラボレーション」概念の登場にもあとづけされて、協働型まちづくり論も本格的な展開をみせはじめることが特徴的である。
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