本年度は、欧米諸国における住宅事情、政策課題の変化に着目し、住宅事情を把握し、具体施策の効果を測定するツールとしてどのような指標(Housing Indicator)が利用されているのかについて、関連する文献の収集、翻訳と主要統計調査で採用されている概念の比較検討を行なった。以下に得られた知見を抜粋する。 1)住宅統計における調査項目からみて、「質」指標は、単体としての住宅から、住環境や職場までの時間距離をも包含する総合的な概念へと発展しつつある。住宅内部については、収納空間の広さやベランダの有無、また、住宅設備に関する調査項目の詳細化、さらに、環境共生や高齢化を見据えた調査項目が整備されつつある。 2)ストックの活用を促進するとともに、その流通を促進することが重要な政策課題として浮上している。「空き家」「二次住宅」概念を明確にし、その実態を把握する方法が模索されている。 3)住宅フローの質を規定する建築基準法令、各種建設助成金、補助金施策は従来、低質なストックの再生産を防止し、「質」水準を引き上げるという観点から「住居水準」を提示してきたが、住宅の「量」「アフォーダビリティー」問題と住み手の側の居住ニーズの多様化により、見直しが進んでいる。
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