本研究の目的は、首都圏全域における鉄道旅客の通勤・通学に代表される日常的な移動状況を、分析することによって、鉄道利用の面から見た首都圏の空間分布特性を記述するための方法論を開発することにある。 本申請期間中に遂行された研究の成果は以下の通りである。 1.データファイルの再構築:本申請以前に作成したマスターデータファイルから旅客流動の時系列分析に必要なデータを抽出して磁気ファイル化を行なった。 2.プログラムの検索機能の拡張:前項のデータ処理によって作成した時系列分析用のデータファイルを用い、今年度の補助金で導入した高速なパーソナルコンピュータ上で、既に構築していたデータベースプログラムを、時間帯を指定して検索することができるように拡張した。 3.検索結果の出力水準の向上:今年度の補助金で導入した画像処理用のパーソナルコンピュータを用いて、前項で作成したデータベースプログラムが画面出力する際の背景となる地図画像データを作成し、一般の人々が旅客流動状況の検索を行なった場合にも路線名や駅名を容易に判別できるようデータベースプログラムを画面内の指定領域拡大に対応させた。 4.都市内人流の定量的分析:鉄道ネットワークのグラフ理論を用いたモデル化に基づく定量的な分析については本申請期間内に十分な成果をあげることができなかったが、一部の路線内に駅を起終点とする旅客流動の時間帯による変化を表現する数学モデルの構築には成功しており、今後更に多くの路線でケーススタディを行なうことによって汎用性のあるモデルに近付けていくことができるものと期待している。
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