研究概要 |
本研究は、アモルファス材料に微量に添加された原子に注目し、熱処理条件を変えることで結晶化状態をコントロールした試料について微量添加原子周囲の局所構造をXAFSを用いて解析し、添加原子がアモルファスの結晶化に与える影響を明らかにすることを目的として行われた。 本研究ではこれまでも多くの物性研究が行われてきているFe-Si-B系アモルファス合金を研究対象としている。出発のアモルファス原料は液体急冷法によるリボン状試料で,DSCならびにX線回折を用いた結晶化に伴う母相の熱力学的結晶化挙動ならびに構造変化を観察した。Fe-Si-B-Cu-Nb系についてのこれまでの研究では、母相に非固溶系であるCuは母相の結晶化が起こる温度より低温の熱処理段階においてすでに周囲の局所構造が変化しているのに対し,Nb周囲の局所構造は第1結晶化段階ではアモルファスのままであり、第2結晶化温度以上の熱処理によって結晶化する。Nbはアモルファス相を安定化しナノサイズ析出粒子の粒成長を抑える役割を持つと考えられている。Cuのかわりに母相に固溶するGaを添加したFe-Si-B-Ga-Nb系でも同様のナノサイズ結晶粒析出が見られることから、本研究ではこのFe-Si-B-Ga-Nb系におけるGaならびにNbについて、熱処理に伴う添加原子周囲の局所構造変化をXAFSを用いて観察し、その役割を解明した。Gaの場合には第1結晶化温度まで周囲の局所構造変化は見られず、母相のFe(Si)相の析出とともに結晶化しておりCuの場合とは明らかに異なる。NbについてはFe-Si-B-Cu-Nb系と同様の挙動を示し、役割は同じであると結論付けられた。本研究の成果は第8回XAFS国際会議(ベルリン、ドイツ)において報告された。
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