研究概要 |
Al-Ti-X及びAl-Zr-X系でXとして数%の3d遷移金属を含んだL1_2型金属間化合物の電気抵抗を4.2Kから1200Kまで測定した.その結果,(1)全ての化合物で電気抵抗の温度依存性は極めて小さい,(2)残存抵抗値はX=Feのあたりをピークに極大を示し,(3)抵抗値の温度依存はMn,Feを加えた場合に負を示す,ことを見いだした.また,(2),(3)は添加元素のd電子数に依存し,Xとして複数の添加元素を加え4元系にした場合にも成立していることを明かにした. これらの実験結果は以下のように説明される.数%存在する遷移金属がL1_2構造の中でAlの位置にランダムに分布するため電子状態を乱し散乱中心として働き,伝導電子の平均自由行程は最近接原子間距離の数倍程度にまで短くなっている.このため,温度上昇に伴うフォノン散乱の影響をほとんど受けない.遷移金属が供給する電子とイオンの周りに作る新たな準位とが影響してフェルミ準位近傍の電子構造が変化する.残留抵抗値のd電子数依存性は仮想束縛状態を仮定したMott-Friedel-Anderson理論によって説明できる.一方電気抵抗の温度依存性は温度上昇に伴うフェルミ準位近傍の電子構造変化が複雑に作用しており統一的な解釈は出来なかった.しかし,Moojiの経験則(負の温度依存を示す物質の電気抵抗が高い)は確認された.
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