近年、特に発光、非線形光学材料への応用に着目した新しい物性の探索を目的として、III-VおよびII-VI族化合物半導体クラスターの作製が盛んに行われている。それらの作製方法には、主に液相コロイド法、スパッタリング法等が利用されてきた。粒径が数ナノメートル(nm)程度の原子クラスターにおける特異物性の一つとして、室温あるいはそれ以下の温度の支持膜上に保持したnmサイズの原子クラスターにおいてはバルク固体に比べ著しく速い溶質原子の拡散が起こること(自発的合金化)が明らかにされた。 本研究では、こうした自発的合金化によってIII-V族化合物半導体クラスターが生成されるかどうかを調べるために、Inクラスター中へのSb原子の合金化について取り上げ、生成相を構造と形態の両面から検討した。その結果、室温に保持されたInクラスター上に蒸着されたSbはクラスター中に急速に固溶し、InSb化合物半導体クラスターが生成する。この自発的合金化によって生成したInSb結晶はウルツ鉱構造をとるが、クラスターを加熱するとバルク結晶の平衡相である閃亜鉛鉱構造に変化することが明らかになった。
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