研究概要 |
本研究では、様々な不純物を添加し液体急冷法によって、高い熱起電力を有するFeSi_2系熱伝半導体の開発を行ってきた。その中でも高い熱起電力を有するB,Pt,Mn添加の試料に注目してさらに研究を進めた。 1.X線回折実験により、液体急冷したリボン状試料はどれもα+εの2相から成り、1053Kの熱処理によって半導体相であるβ単相となることがわかった。SEMおよびTEMによりリボン状試料を観察した結果、幅・数μm、長さ・数10μmの多数の棒状組織から成り、それぞれは0.1μm程度の多数の結晶粒から成っていることがわかった。またTEM明視野像ではこの結晶粒内に一定方向に縞状コントラストが観察され面欠陥の存在が明らかとなった。これらの組織はリボン状試料特有のものであり、この構造が高熱起電力発生の原因と考えられる。 2.原子レベルでの構造を調べるためにALCHEMIによって、β-FeSi_2中のPtあるいはMnのサイト占有確率を決定した。Pt,MnのFeサイト占有確率はそれぞれ1.02±0.07,0.94±0.13となり、Pt,Mn原子のほとんどすべてがFeサイトを占有することがわかった。 3.イオンマイクロアナライザーを用いてβ-FeSi_2中のAl,Mn,Bの拡散係数を種々の拡散温度で決定した。AlはMnとは逆にSiサイトを占有することが報告されている。3種類の元素はβ-FeSi_2中のサイト占有状態は異なるが、アレニウスプロットから求めた拡散の活性化エネルギーは3元素で近い値を示した。高温のα+εの2相領域で熱処理したときの拡散係数は3元素ともアレニウス則から外れ低い値となり,α+εの2相領域では拡散機構が変化したものと考えられる。 4.モンテカルロ法により拡散の計算機シミュレーションを行った結果、2元系格子中に格子欠陥(逆位相境界)を導入した場合、格子中の第3元素の拡散係数が大きくなることを計算した。
|