研究概要 |
中空状微粒子をβ-SiC内に分散させて微細構造変化を求め、熱電物性の向上を試みた。 1)中空状β-SiC粉末の合成と微細構造変化 H_2-SiH_4-CH_4系混合ガスのCVD法により、H_2/(SiH_4+CH_4)=50,SiH_4/(SiH_4+CH_4)=0.3,総流量850ml/minとして1430℃の温度で平均粒径56nm、殻の厚み11nmを、持つ中空状β-SiC微粉末を合成した。中空状粉末をそのまま熱処理すると、一定温度以上で中空状粒子の殻は破れ、球状または角形の中実粒子が粒成長し、積層欠陥は急激に減少した。 中空状粒子の消滅が始まる温度は、N_2中で1650℃、Ar中で1550℃であった。中空状粒子と市販の高純度粉末の混合系では、焼結中に中空状微粒子が、表面拡散によって破れ中空状より小さい中実粒子を形成し、また、その粒子は更に粒成長し、SiCマトリックス内の大きな粒子に取り込まれ気孔を生成した。焼結体の微細構造は大きな粒子と小さい粒子が均一に混ざっているbimodal分布を示している。SiCマトリックスに添加する中空状粉末の割合によって二つの粒子の大きさも調節が可能であった。 熱電物性 2000℃一定温度で焼結した熱電素子の相対密度は中空状粉末のvo1%が増加するに従って減少し、最高70vol%添加で32.9%の相対密度を持つことが可能であった。 vo1%増加によって導電率は減少するが、熱電導率も同時に減少しているため、性能指数には影響がなかった。しかし、ゼ-ベック係数は相対密度の減少と共に増加し、微細構造を制御しなかった試料にくらべ、2倍近く性能指数の増加が現れた。導電率データを導電体一絶縁体系のpercolation式に適用して見た場合、係数tの値は1.95としてその式によく一致した。この特殊構造を持つ焼結体の熱電物性の向上はi)密度低下による熱伝導度の低下ii)欠陥が少ない結晶の生成に起因するゼ-ベック係数の絶対値の増加の二つの理由と解釈した。
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