面衝撃を受けた熱可塑性樹脂積層形複合材料の超音波融着損傷回復のため、以下の点を検討した。 1)面衝撃剥離部および超音波融着修復後の超音波画像計測 層間はく離部非破壊解析に超音波画像解析装置を用いた。空間および深度分解の両立を計るためには、25MHzの大広角収束探触子が最適であった。また、繊維配向の乱れあるいは樹脂の溶融・固化状況の把握には10MHzの大広角収束探触子が最適の条件となった。これらの探触子選択条件をもとに、熱可塑性高分子複合材料(PP/CaCO3)について、強化材表面処理条件による構造変化を計測したところ、処理済み試料の分散性が優れることが明らかとなり、また、強度物性値にも優位性が反映されていたことを明らかにした。 2)熱可塑性樹脂積層形複合材料の超音波融着システムの開発 超音波溶接機(50KHz)のホーン作製したが径10mm最大のものとなった。実際に、はく離した試料について融着を試みたが、PEEKベースでは溶融しなかった。N6ベースでは溶融したが、条件設定が難しかった。すなわち、試料厚さが2mm以上になると音波の減衰が大きくはく離部の融着までに至らない。それ以下の厚さでは融着は行われるが、溶融相が界面付近に止まらずホーンの当てた領域にまでに広がり繊維配向を乱すことが明らかとなった。また、超音波溶接機自身の制御が重要となる。すなわち、溶接時間が長くなるにつれて樹脂温度の急激な上昇がおきるため、樹脂の熱劣化を生じる。したがって、現状では超音波溶接機の制御を工夫することが先決である。たとえば、一定の樹脂温度再現させるような、フィードバック回路が必要となる。また、減衰を防ぐためには縦波よりも横波を利用することも考えられるが、今回の実験では、試料支持方法の改良も必要となり今後の課題となった。 以上総括すると、超音波画像計測については目的とする結果が得られたが、融着については、可能性は見いだせたが、現時点では再熱プレスによる修復の方が優れていた。今後は、強力な超音波発生源でかつ良いシステム制御のある溶接機の開発が重要となる。
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