研究概要 |
高性能希土類ボンド磁石用磁性粉末の作製の手法として,HDDR現象を利用する方法が報告された.この新規な方法はNd_2Fe_<14>B合金などの鋳造合金を水素中熱処理により分解,引き続く真空中熱処理で再結合させるもので,熱処理後の合金はサブマイクロの微細結晶粒から成り高い保磁力を示す.また,添加元素の影響などにより微細結晶粒が配向した異方性磁性粉末となる.しかし,この結晶粒の微細化および異方性化についてのメカニズムは未だ不詳であり,HDDRという新しいプロセスを組織学的に明らかにするために本研究は行われた. 水素中での不均化反応によるNd_2Fe_<14>B化合物の分解過程を調べた結果,分解相であるNdH_2およびa-FeはもとのNd_2Fe_<14>B化合物と特定方位関係を持ちながら分解が進行して行くことがわかった.十分に分解させた試料の組織観察から,Feのマトリックス中に0.1〜0.2μmの球状のNaH_2が約0.5μmの間隔で分散する組織形態をとっていることがわかった.引き続く真空中熱処理により,このNdH_2の界面から再結合反応が起こりNd_2Fe_<14>Bが生成することが確認された.以上より,HDDR処理による結晶粒の微細化は分解後の粒の分散距離の影響を受けていることが明らかとなった. 真空中熱処理の温度と結晶粒の配向との関係を調べた結果,高温で再結合させることで配向度が高くなり,結果的に異方性化には選択的な粒成長過程が含まれることがわかった.さらに高温で真空中熱処理した試料については再結合反応が終了する以前からNd_2Fe_<14>B粒の配向度が高いことが組織観察より確認された.以上より,HDDR現象による異方性化は分解相の結晶方位関係に起因し,高温での再結合反応によって顕著に起こることがわかった.
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