塗布型磁気記録媒体の高密度・大容量化を図る際、その製造工程において、塗膜内での磁性粒子配向方向をコントロールすることは非常に重要である。磁性粒子の配向処理は、塗布した磁性塗料に適当な磁場を印加することによって行われているが、この場合磁場中における磁性塗料の流動挙動は磁性粒子の配向を制御する際考慮されるべきポイントであるが、この観点からの研究例は非常に少ない。そこで本研究では、磁界の影響を受けにくいシンプルな毛管押し出しタイプのレオメータを作製し、この毛管部分に磁界を与えて、磁場中における磁性塗料の流動挙動及び磁性粒子の凝集形態を解析することを目的とした。 磁場印加可能な毛管押し出しレオメーターは、既存の定圧濾過装置を改良して作製した。この装置にフィルターの代わりに長さと内径が既知の塗料押し出しノズルを装着し、さらにノズルから押し出された塗料の流量を測定することによってPoiseuilleの法則から粘度を算出できる。ニュートン流体であるポリエチレングリコールを用いて粘度測定を行った結果、得られたデータの絶対値は既知の値と異なり末端補正等が必要と考えられる。しかし、試料粘度の違いは検出可能であったことから便宜上種々の補正は行わなかった。また、磁場発生装置として市販の電磁石と直流電源を使用し、磁場の強さは印加電圧により制御した。磁場はレオメーターの毛管部分に印加し、磁界の方向は塗料の流れ方向に対して垂直とした。 作製したレオメーターを用いて、バリウムフェライト磁性微粒子をポリエチレングリコール中に分散させたモデル塗料について検討を行った。磁界を印加しない状態では、塗料中の磁性粒子濃度の増加と共に粘度は増加した。磁界(〜4KG)を印加した場合、印加磁界の強度を上昇すると塗料粘度は除々に増加し、その後ほぼ飽和する傾向が見られ、磁性粒子濃度の高い塗料ほど粘度上昇は顕著であった。これは塗料中の粒子凝集構造が印加磁界強度により大きく変化することを示唆している。 今後、装置の精度向上を図ると共に、磁性粒子や配合組成、分散度等の異なる種々の磁性塗料について磁場中での流動挙動を詳細に解析し、さらに磁場中での磁性粒子の回転や粒子凝集構造についても考察していく予定である。
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