軽量耐熱材料として期待されるTi-Al系金属間化合物のうち、Ti_3Alの破壊挙動について単結晶を用いて系統的な研究を行った。Ti_3Alは結晶構造に由来した結晶方位異方性に起因して、その力学特性はC軸と荷重軸とのなす角度に強く依存することが既に知られている。そこで本研究では異なる荷重軸とノッチ方位を持つ5種類のC-T試験片を用意し、破壊に及ぼす結晶方位依存性とともにクラック進展過程についてAEを用いた動的観察を行った。その結果、Ti_3Alの破壊挙動は、塑性変形挙動と同様に強い結晶方位依存性を示し、荷重軸方向ならびにノッチ方位に強く依存した。例えば、試料の[0001]を荷重軸ならびにノッチ進展方向に垂直に選択した場合、55MPam^<1/2>もの高い破壊靱性値(K_Q)を示したのに対し、荷重軸がC軸から0〜30℃の場合には約10MPam^<1/2>程度の低い値で容易に破断に至った。また、破壊後の破面観察によると、前者の主亀裂は広い塑性変形領域をともなって延性的に進展しているのに比べ、後者の主亀裂は発生直後に急速に進展した結果、脆性的な破面を呈していた。この主亀裂の発生、伝播過程の違いは、試験時に発生するAE波においても確認された。詳細な検討により、Ti_3Al結晶における破壊の異方性の原因は、(0001)面と(1012)面上でのへき開破壊であった。このことは、実用化が期待される層状TiAlにおいて、主亀裂がα_2相(Ti_3Al相)内の層界面に平行な(0001)面上で容易に進展することとも良い一致を示した。したがって、Ti_3Al系化合物の破壊靱性の改善には、特定のへき開面上でのクラックの進展の抑制が不可欠である。
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