本研究では、セラミックス熱電材料について、その微細構造、特に粒界構造の制御による熱電性能改善の可能性を理論的および実験的に調べた。本研究によって得られた成果は以下のとおり。 1.粒界を利用したセラミックスについてのモデル計算 熱電セラミックスに移動度の高い粒界層を導入して、その粒界層での量子効果による熱電性能向上の可能性について考察した。シミュレーション実験の結果、粒界層厚さaを小さくするか、あるいは、結晶粒サイズbを小さくすれば、熱電性能指数Zを大幅に改善できることがわかった。例えば、FeSi_2系セラミックスの中に移動度の高いSiGeの粒界層を導入した場合、a=b=50nmのとき、Zは約10倍も向上できる。すなわち、よりミクロなレベルでの微細構造制御を行うことにより、熱電性能改善が可能であることが明らかになった。 2.プラズマ処理により微細構造制御したセラミックスの熱電気的特性 焼結前の原料微粒子をプラズマ中にて表面処理することにより、セラミックスの微細構造、特に粒界構造を制御して、熱電性能指数Z(∝μ/κ)の向上を図った。GeH_4あるいはGeH_4/SiH_4プラズマ処理によって、FeSi_2系セラミックスの熱伝導率κは室温から800Kまでの温度範囲で約30%低減した。一方、移動度μについても500K以下の温度領域で改善効果が現れ、低温ほどそれは顕著になった。その結果、FeSi_2セラミックスの性能指数Zは大幅に改善され、室温では約50%アップした。また、SiGe系セラミックスについても同様のプラズマ処理効果が現れた。例えば、GeH_4プラズマ処理によってSi_<80>Ge_<20>の移動度が約2倍に向上した。以上より、プラズマ処理による微細構造制御が熱電性能の改善に有効であることがわかった。
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