水晶の薄片化を実現するための新しい加工法として、光子エネルギーの高いエキシマレーザによる加工を行い、基本的な加工特性を明らかとした。得られた結果をまとめると次のとおりである。 1.大気中でのアブレーション加工実験 両面ポリシングを行ったATカット水晶ウェハ-上にレーザ光を集光照射し加工実験を行った。 (1)Krレーザ(波長248nm、光子エネルギ5.0eV) 光子エネルギが水晶の結合エネルギ4.9Vとほぼ同等なため、分子結合の直接的な切断よりは不純物による局所的な吸収がおこり、熱応力による割れが発生した。割れずに加工されたときの最大深さは2.35μmであった。 (2)ArFレーザ(波長193nm、光子エネルギ6.4eV) 水晶板にレーザ光を垂直に照射しているため、照射面側(おもて側)とその裏側(裏面)の両面で同時に加工が行われた。光子エネルギが高いため、分子結合を直接切断し加工が行われ、おもて面では加工深さ約35μmまで割れずに加工できた。裏面では今回の実験範囲内では割れが認めらず約80μmまで加工が可能であった。加工速度はおもて面および裏面でそれぞれ約0.15μm/pulse、約0.25μm/pulseとなり、裏面の方が大きくなることがわかった。また、おもて面、裏面とも約550mJ/cm^2以上のフルエンス(1パルス当たりのエネルギ密度)で加工が行われることがわかった。表面あらさは加工深さとともに増加し、おもて面ではあらさの値は加工深さの10%程度であり、裏面では25〜50%程度であった。 反応性エッチング実験 反応性ガス(CF_2Br_2)を真空容器内に1〜20Torrの圧力で導入し、ArFエキシマレーザ光により分解し水晶のエッチングを行った。ガスによる効果を確認するために、レーザ光による直接的な材料除去が行われないフルエンスの値で照射した。加工面の表面あらさはポリシングの試料(2nmR_<max>)とほぼ同程度の約4nmR_<max>であった。また、加工速度は0.02nm/pulseとなった。
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