研究概要 |
本研究では、鉄鋼材料の腐食疲労に及ぼすイオン窒化処理の影響を検討した。使用した材料は、機械構造用鋼S15Cおよびフェライト系ステンレス鋼SUS430の2種類である。これらの材料に大阪大学溶接工学研究所所有のイオン窒化装置で窒化処理を行った。疲労試験には小野式回転曲げ疲労試験機を用い、試験片に塩水を滴下して腐食疲労試験を行った。疲労試験データの解析には、パソコンを用いて解析ソフトで行った。得られた結果をまとめると次のようになる。 1)本研究の範囲内では、窒化層の硬さおよび厚さは窒化温度,時間および雰囲気の窒素濃度が高くなると大きくなった。 2)窒化層には鉄窒化物ε-Fe_<2〜3>Nおよびγ'-Fe_4Nが形成されていた。またSUS430には合金元素の窒化物CrNも形成されていた。 3)イオン窒化処理した材料の大気中および腐食環境中の疲労強度は、窒化していないものに比べ増加した。このことから、イオン窒化処理は耐疲労性の向上に有効であることがわかった。 4)S15Cの疲労強度は、窒化層が厚いほど大きくなった。また腐食環境中の疲労強度は窒化層表面の化合物層が厚いほど高くなった。このため表面の化合物層が厚くなる窒化条件でイオン窒化することが耐疲労性の向上に有効であることがわかった。 5)SUS430の腐食環境中の疲労強度は、イオン窒化処理したもののが窒化処理していないものに比べ大きくなったが、大気中の疲労強度に比べ低下していた。これは窒化によって耐食性が低下したためで、SUS430では耐食性の低下しない窒化条件を選定する必要がある。 ・本研究の結果の一部は、95年度機械学会九州支部夏期講演会で発表する予定である。
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