研究概要 |
気相放電融合により、圧粉体電極材料の溶滴を被加工材に移行、合金化させる表面硬化プロセスを新たに考案した。窒素雰囲気で電極と被加工材間の放電エネルギを利用し、アルミニウム表面への改質層の形成を行った。放電条件、雰囲気圧力、加工時間、窒素ガス流量および圧粉体への添加物が改質層の組成に与える影響を検討した。 被加工材には純アルミニウム(A1050)を、電極にはアルミナ(Al_2O_3)とグラファイトの混合圧粉体を用い、一部の試料には塩化アンモニウム(NH_4Cl)、カーボンブラックを添加した。改質層の同定にはX線回折法を用いた。 圧粉体電極へNH_4Clを添加すると窒化が促進され,Alに対するAlONの回折強度比が、添加しない際の1.3倍に増加する。窒素雰囲気圧力が増加すると、検出される相の種類には変化がないものの,Alに対するAlONの回折強度比が増加する。これは、雰囲気圧力が増加すると単位体積当たりのN_2分子数が増加し、窒化が促進されるためである。またこのことを用いると、雰囲気圧力によるAlONの生成量の制御が可能である。高ピーク電流では、アークの熱エネルギが上昇して、圧粉体電極と被加工材間のN_2圧力が上昇し密着性の悪いAl_4C_3が飛ばされる。Al_4C_3は脆く、改質層の性質を低下させるので、高ピーク電流での処理が有効である。圧粉体電極に粒径22nmのカーボンブラックを添加すると、改質層中に含まれる相の種類は同じであるが、Alに対するAlONの回折強度比が、カーボンブラックを添加しない際の1.2倍に増加する。これはグラファイトに比べてカーボンブラックが微細粒であるため、Al_20_3粒子の表面を密に覆い,Al_2O_3粒子相互の接触を防ぎ、窒化反応面積を増加させるためである。なお、カーボンブラックを含む圧粉体電極中に、さらにNH_4Clを添加しても、改質層の組成に変化はなく、またAlに対するAlONの回折強度比もほぼ同じであった。
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