ダイヤモンドの気相合成研究は世界的に盛んに進められているが、核生成過程の機構・制御法に関しては不明な点が未だ多く残されている。本研究では、ナノスケールでの分析・加工機能を持つSTM(走査型トンネル顕微鏡)を用い、核生成をin-situ制御することを目的とする。このため、核同定・核生成サイト形成を試み、以下の成果を得ている。 1)ダイヤモンド核の同定の試み トンネル電流(I)-電圧(V)特性、トンネル電流-探針・試料間距離(s)特性測定によるダイヤモンド核の同定を試みた。熱フィラメント法によりHOPG(高配向熱分解グラファイト)基板上に作製したダイヤモンド微粒子を測定試料とした。得られたI-V、I-s特性は、粒径250nm程度の堆積物ではダイヤモンド的特性を示したが、20nm程度の堆積物では、グラファイト的特性を示した。現段階では、この結果が表面伝導層の影響によるものか、観察粒子が非ダイヤモンド粒であるためかは確認されていない。同一粒子の成長過程におけるI-V、I-s特性変化の追跡が今後必要と考えられる。また、I-V測定後の像観察では堆積物の損傷が見られたため、I-s測定の方が核同定手法としては有利であると考えられる。 2)基板表面へのダイヤモンド核の生成サイトの形成の試み 現有の装置のCVD部、STM部間の移動機構に対する高精密移動ステージの改良により、STMの視野範囲である2μの精度で位置再現が可能となった。これによりナノオーダーでの表面加工-堆積-観察が可能となった。次に、STM微細加工により40nmの穴をHOPG基板上に形成した後、ダイヤモンドCVDを行った。CVD後のSTM観察では、水素エッチングにより400nm程度に拡大した穴のエッヂに10nm程度の堆積物が観察された。これらの粒子の同定は現在進行中であるが、この結果は、基板表面に特異なサイトを導入することにより堆積物の生成を制御し得ることを示唆すると考えられる。
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