研究概要 |
液体金属および合金の熱伝導度の値は,プロセス・シミュレータの基礎データとして重要である.本研究は,それらの熱伝導度の測定方法を開発することを目的として行った. 実際には,非定常熱線法を液体金属用に改良することを試みた.すなわち,非定常熱線法を液体金属のような導電性試料に適用する場合には,測定プローブを絶縁性物質で被覆する必要がある.さらに,精密な測定を行うためには,この被覆層が十分高い熱伝導度を有し,十分薄いことが要求される.そこでまず,これらの条件を満足する被覆物質およびその形成方法を検討した結果,被覆物質としてはアルミナが最適であり,合金の高温酸化を利用して形成できるとの結論に達した. プローブをAlを含有する合金であるアルメルで作製し,それを空気中,960℃で10分間酸化した.このプローブでグリセリンおよびエチレン・グリコールを測定した結果,それぞれ,0.29〜0.31W/m・Kおよび0.26〜0.27W/m・Kの値を得,これらの値が文献値と概ね一致することから,基本的に測定が可能であることを確認した.現在,水銀の測定を行っているが,得られた測定値(13W/m・K)は,文献値(8.5W/m・K)と比較して大きく,対流の影響を受けている可能性があると考えられる.この点に関しては改善の余地がある. また,アルメルを酸化した場合には,酸化膜にはアルミナ以外に,アルメルの成分であるNi,Co,Si,Mnの酸化物も含まれているために,高温の液体金属にこのプローブを適用する場合には金属に還元される酸化物もあり,被覆層の絶縁性が維持できなくなる可能性があることがわかった.この対策として,Alを固溶するPtをプローブ材として使用し,これを酸化してアルミナ単相の被覆層を形成することが有望であると考え,今後実験することとした.
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