1.反応プロセスへのベイジアン時系列モデルの適用 本年度は、反応機構が解明されているプロセスに対して実験を行なった。実験例としてアルカリによるエステルのけん化速度(2次反応速度定数)の測定を採用し、酢酸エチルと苛性ソーダの反応を恒温槽にて行なわせた。文献値による反応速度定数を用いて、生成物濃度の経時変化を計算し、逆滴定法により求められた濃度(実験値)と比較した。結果として、ベイジアン時系列モデリングより実験値の誤差を減少させ得ることがわかった。しかし、簡単な反応プロセスということもあって結果はほぼ予想されたものであり、複雑な反応プロセスに適用しない限り詳細な実行性の検討は行なえないものと推察された。 2.画像処理へのベイジアン時系列モデルの適用 これまで研究例がない画像処理への応用を試みた。物体の輪郭形状を表す2次元の点列を平面極座標系で表し、半径と角度を時系列成分とした。半径の時系列成分は傾向変動要素、定常変動要素、周期変動要素に分解され、各変動要素にはベイズモデルの特徴である事前情報が設定されるようにした。状態空間を構成し、拡張カルマンフィルタを使用して、各変動要素を逐次推定しスムージングを行う処理法を開発した。計算機実験として、まず輪郭形状に凹凸のある物体に適用し、周期成分として凹凸が評価されることを確認した。また、活性炭の顕微鏡画像に対して適用し、複数の活性炭の輪郭形状が1つのクラスのモデルとして表し得ることを確かめた。なお、これらの成果の一部を化学工学会(仙台、1994)にて発表した。
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