噴霧乾燥法を用いた酵素の乾燥に関する基礎研究として、KCl水溶液を用いて懸滴法により高温気流中における蒸発実験を行い、液滴の蒸発速度に及ぼす無機塩の析出の影響について検討を行った。 測定は液滴の重量、滴温および液滴の表面積の経時変化について行った。液滴の重量と温度変化については、既に同時測定できる装置を開発済みである。そこで、本研究では、さらに液滴の蒸発速度を測定する際に必要となる液滴の表面積の経時変化を従来の写真撮影法で求めるのではなく、ファイバースコープを用いて撮影し、それを画像処理装置により画像処理することから液滴の表面積を求めた。これより、従来の液滴の蒸発実験ではなし得なかつた、無機塩の析出を伴う液滴の蒸発過程を非定常で液滴の重量と温度だけでなく表面積も同時測定できる装置を開発した。 さらに、上述の装置を用いて塩化カリウム水溶液の単一液滴の蒸発実験を行ったところ、液滴の蒸発速度は溶質の析出にともない純液の蒸発速度よりも大きく減少した。そこで、一つの試みとして液滴の蒸発速度を計算する際に必要となる表面積に関して、溶質の析出した部分からは水の蒸発が起こらないと仮定し、液滴の全表面積から溶質の析出した部分を除いた有効面積で蒸発速度を再計算した。その結果、有効表面積が全表面積の60%以上を占める範囲では上述の蒸発速度は純液の蒸発速度と良好に一致した。しかしながら、析出した面積が大きくなるに伴い蒸発速度は純液のそれよりも大きくなった。この原因としては、溶質の析出した部分からは水分の蒸発が起こらないとして蒸発速度を計算したためであると思われるが、この部分での水分の蒸発速度の実測および理論的予測は非常に難しいため、今後の研究課題である。
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