CVD法により無機多孔質体の細孔内へのパラジウムを選択的に担持したパラジウム/多孔質アルミナ複合膜の調製法および水素透過性能について検討した。平均細孔径200nmの多孔質アルミナ管を用いたとき、パラジウムで細孔を埋め、水素のみ選択的に透過するためには、24時間の析出が必要であった。なお、このようにして得られた複合膜の同一条件下における窒素に対する水素の透過流束比は、ガスクロマトグラフによる窒素の検出限界を考慮して求めた結果、少なくとも 500であった。得られた複合膜は、膜厚4.5μmの無電解めっき複合膜に比べ、673 Kで1.6倍の高い透過流束を与えた。この結果から、CVD法で作製した複合膜でのパラジウム担持量は、2.8μm程度の平滑なパラジウム複合膜の析出量に相当していることがわかった。また、水素透過流束は水素分圧の平方根の差に比例していたことから、透過の律速段階は原子状に解離した水素のパラジウム内の拡散にあることが明らかとなった。 SEMおよびEPMAにより得られた、多孔質アルミナ管内の表面有効層(最表面から約5μm:平均細孔径、200nm)におけるパラジウム分布から、パラジウムは主として表面有効層の細孔内および表面付近に担持されていることが確認された。以上のことから、CVD法で作製した複合膜が優れた水素透過能を示すのは、パラジウムが細孔内に担持され機械的強度を失うことなく薄膜化が可能となったためと考えられた。
|