研究概要 |
本研究では,吸着容量の大きな活性炭の表面に硝酸による酸化によりカルボキシル基,水酸基を導入した。これに有機化合物をエステル化反応により固定化した。さらに熱処理することにより固定化された有機化合物の炭化物により細孔径を調整するという新しい方法(エステル炭化法)により分子篩炭素を製造することを試みた。実際に,エステル結合する有機物として1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸,フェノール,安息香酸,サリチル酸,ピロガロール,1-ナフトール,フルフリルアルコールを用いて300〜700℃で熱処理を行った。その結果,活性炭の表面積は小さくなったが,細孔は分子篩い効果が出現するまでに均一な細孔径とはならなかった。 そこで,活性炭の代わりにフェノール樹脂の炭化物を出発原料に用いてエステル炭化法により分子篩炭素の製造を試みた。また,既往の方法である被覆法による分子篩炭素の製造を行い,エステ炭化法と被覆法による分子篩炭素の細孔構造の違いについて検討した。その結果,被覆法により0.40〜0.43nm付近に細孔径を有する分子篩炭素が製造できた。しかし,熱処理温度を変化させることにより細孔径を変えることはできなかった。一方,エステル炭化法では,熱処理温度を変化させることにより細孔径を0.33〜0.50nmの範囲で変化させることができた。これは,エステル結合により有機化合物の熱分解挙動が変化し,徐々に熱分解したためであることが収率の測定により明らかとなった。
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