本研究は、工業的に重要な遺伝子組換え枯草菌を用いて、窒素源濃度制御を行うことによる有用遺伝子産物の効率的な生産を目的とし、次のような研究成果を得ている。 1.本研究で用いた遺伝子組換え枯草菌の主なエネルギー源は、窒素源である。従って、窒素源による菌体内脱アミノ反応の結果、培養液中にアンモニアを蓄積することが分かった。培養初期アンモニア濃度の影響を調べた結果、アンモニア濃度1g/Lを培地に添加した場合、無添加に比べて菌体増殖速度と遺伝子発現はそれぞれ2倍と10倍まで減少した。 2.培養中に蓄積されるアンモニア濃度を制御するために窒素源濃度のオンライン測定システムを開発した。倍地中の窒素源は主にアミノ酸であることでアミノオキシダーゼを固定した酸素センサーを利用し、窒素源濃度をオンラインで計測することができた。さらに、この装置に窒素源濃度を制御するためのソフトウエアを組み込み、窒素源濃度をオンラインで測定・制御することができた。 3.本研究で開発したオンライン窒素源測定・制御装置を用いてアミノ酸濃度を20、10、5及び2mMに制御した。培養中、アミノ酸濃度を低レベルに制御するに従って蓄積されるアンモニア濃度は減少し、比遺伝子産物生産速度及び窒素源からの収率は増加した。 4.遺伝子発現を増大するために遺伝子発現レベルに対する20種類のアミノ酸の影響について調べた。その中でイソロイシンとアスパラギンを添加した場合、無添加に比べ、遺伝子発現は2倍以上向上した。従って、イソロイシンとアスパラギンを富化した窒素源を用い、窒素源を低レベルに制御することによって今までの遺伝子発現を2倍以上向上させた。
|