研究概要 |
DNAを濃縮するための高周波不平等電界を印加するために、まず、直角のエッジをもつアルミテープを1mmの間隔で配置した電極を作成した。この電極を用いて大腸菌縣濁液に1MHz、150Vの高周波電圧を印加したところ、電極のエッジにおいて大腸菌が濃縮され、同時にパールチェーンが形成されることが確かめられた。また、プラスミドDNAを含む水溶液について同様な実験を行った結果、電極のエッジ付近においてDNAの濃縮が観察された。したがって、高周波電界を印加することにより大腸菌近傍の局所的なDNA濃度が上昇していると考えられる。そこで、高周波電界を印加した後に高電圧パルスを加えることにより、大腸菌に対する遺伝子導入効率を高めることを試みた。導入実験を行うために、高周波電界用の電極に加え、その垂直の方向に電気穿孔用のパルスを印加する電極を設置した。この電極における高周波電界無印加時の遺伝子導入効率を評価を行ったところ、1800V,時定数8msの減衰波パルスを印加することにより、DNA1μgあたり約1×10^8コロニーの導入効率が得られた。そこで、高周波印加電極に1MHzの電界を加え、導入効率への影響を解析した。高周波印加電圧を50V、100V、150Vと変化させた結果、50Vでは遺伝子導入効率に対する効果が見られず、一方、150Vでは大腸菌の生存率が低下する結果として導入効率も減少した。100Vの高周波電界を加えた場合には、高周波電界による遺伝子導入効率の有意な向上が見られた。また、印加時間の導入効率への影響を評価したところ、30秒の印加時間では高周波印加の効果は十分見られなかった。一方、120秒の印加では導入効率は却って低下するために、100V,60秒の高周波印加が最適であると思われる。その際には無印加時の約2倍にあたるDNA1μgあたり約2×10^8コロニーの導入効率が得られた。
|