研究概要 |
本研究では,毛状根増殖に適した新規バイオリアクターの開発を目的とし,培地循環型バイオリアクターを用い,種々の液流速下でレッドビ-ト毛状根を培養し,以下の知見を得た. 1.培地循環型バイオリアクターは,培養液中に酸素を溶存させる酸素富化槽と毛状根が培養液から酸素を摂取し増殖する増殖カラムから成り,増殖カラムへ培養液をポンプで循環させることで酸素供給を行う.本リアクターを用いカラム内のバルク流速を種々変化させ培養を行ったところ,流速の増加に伴い細胞増殖速度が向上し,しかし,ある一定流速以上では逆に低下し,極大値を持つことがわかった.また,増殖カラム内ので入口での酸素収支式より,液流速が低い範囲では,培養液(液)-毛状根(固)間に存在する境膜抵抗が律速となり,酸素移動を支配していることがわかった.一方,カラム出入口のおける圧力損失を測定したところ,液流速の増加に伴い細胞にかかる圧力損失が上昇することがわかり,液流速が高いところでは,液流れによる細胞表面での剪断応力等のストレスの増加により増殖が阻害されると考えられた. 2.培地循環型バイオリアクターを用い,上記実験から求められた最適な流速で高密度培養を行った際,増殖カラム内において毛状根の酸素摂取により溶存酸素(DO)の濃度勾配が生じ,培養液出口付近では溶存酸素が低くなり,細胞増殖の低下がみられた.そこで,液流れに垂直方向の断面積を大きくし,毛状根との接触する流路距離を短くしたラジアルフロー型バイオリアクターが,適当であると考えられた.増殖カラムとしてこのリアクターを用い毛状根の培養を行ったところ,従来の単通型カラムと比べ,1.3倍の増殖量の向上がみられた.また,高密度培養時においても出口DO濃度を常に高い値で維持することができ,本リアクターの有効性を示すことができた.
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