遺伝子工学における非RI化は実験者の安全性、環境問題はもとより、操作の簡便化、高速化にも繋がり、分子生物学の発展に寄与するところは計り知れないものがある。 申請者は、酸化還元活性な金属錯体とオリゴヌクレオチド、あるいはインターカレータのコンジュゲートを合成した。合成した酸化還元活性オリゴヌクレオチドはターゲットDNA(1本鎖、2本鎖)と安定な錯体を形成する。この錯形成反応の熱力学的パラメータを複合体の融解曲線の解析と滴定型の熱測定装置を用いた2つの手法によって求めることができた。これによると、フェロセン修飾によって3本鎖複合体は2〜3kcal mol^<-1>の安定化を受けていることがわかった。恐らく、2本鎖のターゲットDNAのメジャーグルーブ内の塩基と、フェロセンをつなぐアミド結合部位の水素結合、あるいはリンカー部位の疎水的な相互作用が寄与したものであろう。修飾によって、錯生成反応のエンタルピーだけでなくエントロピーも比較的大きく変化したことにより、より協同性の高い結合となった。温度コントロールによるプローブのオンオフ制御を考えたときには非常に都合がよい。 サイクリックボルタンメトリーにより電気化学挙動の基礎的な検討を行なった。その結果、フェロセン修飾オリゴヌクレオチドの酸化還元電位は、ターゲットの二次構造(1本鎖、2本鎖)やターゲットの前後のシークエンスにほとんど影響を受けないことがわかった。したがって、本プローブはこれらの事柄を全く考慮することなく検出系にそのまま応用できる。
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